純情少女とエロ女 第三章Cまで 前編

プロフィール

SNOW CLYSTAL

Author:SNOW CLYSTAL
著者:スノー クリスタル

ずっと書きたいと思っていた
テーマに取り組んでみました。
男って… 女って…
やっぱ、奥が深くて解明でき
ないなぁ…

特に主人公が16〜20才まで
という設定なので、
大人の男女の愛まで掘り下
げるところまでは行かなかっ
たかもしれないけどね、
そんでも体当たりしてみたゾ。

まわりに振り回されながら
変化していく少女の心と体に
ピッタリ寄り添って、読み進
んでね。

ついでにいっしょに恋をしな
がら…。
   


リンク

  
  • 十五夜(素材)


  • 管理画面

  • メールフォーム

    名前:
    メール:
    件名:
    本文:


    PoweredBy


    第三章Cまで前編:12話  読むのにかかる時間:20分くらい


    冬休み! 

    年末の大掃除で露草家はいつもに輪をかけてピカピカだ。
    正月用の締め飾りも本格的。
    そしてあやめにとって画期的な出来事が重なった年が明け、新年が
    来た。

    この一年がいったいどんな年になるのか、
    あやめには想像がつかない。
    願わくば、祐さんと本物の愛を育むことができますように…
    初詣で心から祈ったよ。

        (え? クリスチャンの端くれじゃなかったの??)

    露草家には、泰造・良介と付き合いのある人たちや親戚が大勢、
    年始の挨拶に押し寄せるので、
    正月は、あやめたち姉弟妹は、自分たちの部屋に避難するか、外へ
    遊びに出てしまうのが常だ。

    家の中をうろうろしていようものなら、すぐにお手伝い催促の号令が
    かかる。

    あやめも、夜菜子他の幼なじみグループといっしょにファミレスで
    おしゃべりすることになり、
    久しぶりに幼い頃の無邪気な自分に戻って楽しい時間を過ごした。

    やはりみんなの楽しいエピソードあれこれの聞き役専門であることに
    変わりなかったが、
    その役こそが、あやめにとっての安らぎの居場所だったのだ。

    あやめが自分の恋のなりゆきや行方について話したかって?
    そりゃ、“ボーイフレンドがいる” くらいのことはね。

    ふつう、女の子が何人かでワイワイ集まった時は、お互いにそれほど
    詳しいことまでは話さないものだ。
    興味本位で、根ほり葉ほり聞こうとする子もいない。

    そういう子はデリカシーがないと見なされるから。
    親友とかと個人的に話す時は別だが。


    今年は、あやめが家に居づらい理由がもうひとつ加わった。
    それは、“不良娘” のレッテルを貼られてしまったこと。
    すでに噂は、一部の親戚の間に広がっていた。

    命取りになったのが、
    あやめが年末の礼拝にキスマークをつけて出席したことだろう。
    あやめはそのことで、
    久しぶりに顔を合わせる親戚連中のいいゴシップ種にされていた。

    おかげで、家庭内に何とも形容し難い、冷たい空気が流れている。
    静香も失望を露わにし、ろくに口も利いてくれない。
    それであやめは家庭の中での狭い居場所を、ますます狭くしていた。


    河原で祐に首筋に紫色のあざを付けられたあと、
    あやめは必死でそれを隠そうとした。
    長い髪を垂らしたり、ずっとトックリのセーターを着ていたり、弟、妹
    たちとお風呂に入らなかったりして。

    ところが…
    日々薄くなり、目立たなくなってきたので、家庭内ではどうにかごま
    かし通せたものの、明らかにそれとわかるなごりを、教会でバッチリ
    見られてしまったのだ。

    耳の斜め後下にあるため、面と向かって話をした相手は、それを見
    逃さなかった。

    同年代の女の子に、

    「どうしたの、ここ ? 」

    と指さされ、

    「天ぷらの揚げ油が飛んで、やけどしちゃったの。」

    と、前もって用意しておいた通りの返事をしたのだが…
    どう考えてもぎこちなく、不自然だったと、あやめ自身も思う。

    −きっと、”男の人とそういう関係まで行っている” と
      思われたんだ…

      よりにもよって、祐さん、どうして誰にでもわかってしまう、こんなと
      ころに、こんなものを付けたのよー!! 。・゚・(ノД`)・゚・。

    家族、親戚を含め、多勢に無勢とはこのこと。
    誰もかばってはくれないし、かと言って真実は話せないし。


    あやめは、身内の好奇心と想像から生まれたさげすみの視線に、
    ひとりで耐えた。耐えられた。

    なぜかって?
    それは、 “5%くらいの嬉しさもあったから” 。

    「愛しているよ、好きだよ、君は俺のものだ。」
    と、印を付けられたような気もしていて…。

    頭の堅い教会の人たちや身内の顰蹙を少しくらい買っても、あやめは、

    −その小さな幸福感と引き換えなら、仕方ないか …

    と思うのだった。






    25.jpg

      いつものお正月なら、こんな感じだったのかナ…





    テーマ : 恋愛小説 - ジャンル : 小説・文学

    あやめは文字通り、少女と大人の間にいた。

    ”心” と、“大人の女としての体” がよりよいバランスを保ちつつ、
    同化してこそ一人前の女性…?

    それとも亜紀が言うように、体が大人の女になれば心はあとから
    ついてくるのか。

    大人の女としての体が伴わない愛は、半人前なのか。

    どちらにしろ、16才でおとぎ話の王子様にあこがれるだけの少女
    では、とてもいただけないが。

    幸い、相手(祐)が野獣でなく、エロおやじでもないので、ここらへん
    がややこしい。

    外見はどう見てもおとぎ話に出てくるような王子様風。
    野獣性もいやらしさもいっさいなく、おおらかで爽やかで、吸い込ま
    れそうな瞳と甘い声を持つ青年。

    その青年と、プラトニックラブは成らず、“大人の女” を求められる
    あやめ。
    精神年令が要求について行けない!

    それに世間体もあった。

    今から、祐が望むような大人の男女交際をすれば、停学になるかも
    しれない。
    親に知れたら勘当される。

    祐にしたら自然で何でもないCレベル突入でも、あやめにとったら
    人生の賭けだ。
    そのままいずれ祐と結婚まで漕ぎつければよいが、そんな保証は
    どこにもない。

    あやめは、やはり祐に、

    「そういうおつきあいは、結婚するまで待って」

    と言うつもりだ。
    それだったら家族も何も言わずに、暖かく見守ってくれるのではない
    だろうか。

    −だって、そうなることを恐れて
      おつきあいを反対してるんでしょ? 大人って。

      それまでは、おしゃべりしたり、いっしょに音楽を聞いたり、
      映画を観に行ったり、でいいじゃない?

      それだけじゃ、祐さん、おもしろくないのかナー…

    あやめは、祐があやめといっしょにいる時の顔を思い浮かべる。

    あやめは、”祐があやめの話す内容について目を輝かせる”という
    姿を見たことがなかった。
    それに、デートにも誘ってくれない。

    そりゃ、受験生ということもあるし、
    あやめの父親が市会議員といいうことも知っているので、気軽には
    誘えないのかもしれないが…
       (ウウン、それはナイナイ! ←オマエ誰じゃー?)

    また、祐はケータイを持っていない。
    月々の支払いがあまりに高額つづきだったため、何か月もの、すった
    もんだの繰り返しの末に、“受験が終わるまでは” と、親に取り上げ
    られたという。

    つまり、祐から連絡が来ない限り、あやめは祐と会うことができなか
    った。

    それで、祐が現れそうなジャズ喫茶や銀平の家のあたりをうろうろす
    ることになるのだが…
       (こ、これって、ひょっとして、ストーカー?!)

    今回のBレベル到達事件以来、あやめも複雑な気持ちだ。
    こちらが 「会いたい」 と、店や顔見知りを通じて祐に伝えることはでき
    る。

    −でもそれって、この間のようなことになってもいいって
     言っているみたいよねえ…
      こちらから誘っているように思われそう…

    あんなことのあと、とてもこちらからは誘えない。

    でも、それでも、祐といっしょにいたい。
    また優しく手を握ってほしい。
    そっと抱きしめてほしい。

    −そこまでだったら何の問題もないんだけどナー… (´ρ`)


    あやめは良い案を思いついた。 
    祐の家に、用事を作って行けばいいのだ!

    −何にしよう…

    それで思いついたのが、
    コンテストに応募する読書感想文を見てもらって、アドバイスをもらう
    こと。

    −いくら受験勉強に忙しくても、彼女のこんなまじめな相談なら、
      きっとお母様も認めて下さるはず… 


         ほとんどの男女の場合、
         そんな理屈や遠回りは不要で、
         「会いたいの!」 と素直に飛び込むことで
         ことは簡単なのだろうが、

         どこまでも慎重で不器用なあやめだ。




    テーマ : 恋愛:エロス:官能小説 - ジャンル : 小説・文学

    実は、あやめは家族の間でちょっと鼻つまみ者になりつつはあったが、
    もう高校生であるし、勉強も生徒会やボランティア活動もきちんとやっ
    ているので、
    祐との交際についても、むやみに禁止されるようなことはなかった。

    「学生の身分をわきまえて!」
    それが、露草家の大人たちが振りかざす錦の御旗だったが、
    ”できるなら祐とは別れさせたい” いうのが本音のようだ。

    交際をどこまで認めるかは、微妙な問題だが、

    多少なりとも、汚され、今後の縁談などにケチが付くはめになる前に、
    ”どうにか、その評判の悪い男と別れるよう説得しなければ”
    と、両親は考えていた。

    そんなこんなで、週末に時々、今までよりはおしゃれに気を使って出
    かけるあやめに、母が釘を刺した。

    「おかしな連中とは付き合わないで。
    もう高校生なんだから、自分の行動には責任を持ってね。

    あなたの後ろには、
    いつもおじい様やお父様の看板があることも忘れないで。

    あなたの軽率な行動が、
    お父様の選挙に影響しないとも限らないのよ。

    それから、ケータイ持って出てね。 買い物頼むかもしれないから。
    夕飯の支度までには帰るのよ。」

    あやめの家族は、ひとりひとりが携帯電話を持っているわけではなく。
    父以外の家族は、用事のある者が必要な時に家族共通の一台を
    使いまわしている。

    これであやめは、首に鈴をつてられた猫同然だ。
    どこにいるか、常にチェックされるというわけ。

    「今日はね、友だちといっしょに、冬休みの宿題の読書感想文を
    仕上げるの。夕方までには帰るから。」

    とはいうものの、祐と会える確約はない。
    会えなくてもいいから、勇気を出して祐の家を訪ねるつもりだ。

    何だかわからないけれど、切ない気持ち。
    優しく手を握られてから、
    その手のひらの温もりが忘れられないでいる。

    −いつもじゃなくていい。
      時々、そっと握ってほしい。
      会わずにいると、心もとない。

      運命の糸が切れないように、
      糸を補強してほしいよ。


    電車に乗って、感想文の原稿用紙を読み返す。

    本のタイトルは、”トオル、君を忘れない”

    長野冬季オリンピックへの出場がほぼ確定していたモーグルの選手。
    オリンピックを目前にして、スキルスがんを宣告される。
    何もかも輝いていた青春が、過酷にも奪われる。
    死に直面した徹君と、家族、友人たち、ガールフレンドの心情…。

    最後まで希望を捨てず、死と向き合って精一杯生きた徹君。
    がんと闘う物語はよくあるけれど、あやめは徹君の、

    「俺が死んだら、みんな俺のことなんて忘れちゃうんだろうな。」

    というその言葉に、命のカウントダウンの中での彼の心の奥の本音
    を垣間見るようで、いたたまれなくなる。
    そして、命の尊さを教えてもらっている気がする。

    −私も、今日は昨日の続きだとか、明日は必ず来るとか思わずに、
      今日という日は二度と来ない大切な一日と思って生きたいよー。

      人や家族にとってでなくて、自分にとって本当に大切なものは何
      かを考えながら、今この時を精一杯行きたい…

      会いに行く理由ではあるけれど、 
      この感動を、祐さんに伝えたい。

      自分にとって、大切な人になるかもしれない人だもの…


    電車に乗り、バスに乗り換えて祐の家に着いた。
    ドアベルを押して、ドキドキしながら待つ。

    ドアを開けたのは、祐の母親だった!

    あやめは失望と緊張と後ろめたさでしどろもどろになりながら、
    まるで言い訳をするように、自分が来た理由を説明した。

    「お休み明けに読書感想文を提出しなければならないのですけれど、
    どうしても祐さんに見ていただきたくて…」

    祐の母親は、快くあやめの話を聞いてくれた。
    が、祐は不在だという。

    「待ってもらってもいいんだけれど、いつになるかわからないからね。
    ごめんなさいね。せっかく来ていただいたのに。

    私も締め切り原稿があって、お相手して差し上げられないのよ。」

    「とんでもないです。
    急におじゃました私が悪いんです。

    じゃ、またの機会にします。
    ありがとうございました。」

    −フー…

    おいとまを告げ、相手の返事を聞くのもそこそこに、あたふたとドアを
    閉める。
    恥ずかしさと後悔で、頭がまっしろしろになっていた。


    そこであやめがしたことは…

    祐の家の入り口が見える住宅街の角で、ただ立ちつくすこと。

    自分の性格に似合わぬ大それたことをしたあとの脱力感で、足が
    凍りついてしまい、バス停に向かって一歩が踏み出せないのだ。

    それに、祐が帰ってくるかもしれないという小さな希望の炎が胸に
    点ってしまった。

    あやめはそうしてずっと、ずっと、そこに立ち尽くしていた。
    日が暮れるまで。

    祐が現れたら、

    「あら、今、帰ろうと思っていたところなの。」

    と言うつもりだった。

    すっかり日が落ちてあたりが夕闇に包まれた頃、あやめのバッグの
    中でケータイが唸った。
    あやめは寒さでかじかんだ手で、その小さな金属の塊を捜す。

    母親だ。
    なかなか帰らないので、業を煮やしているのだろう。

    あやめは、明かりの灯された祐の家の玄関先をうらめしそうに見なが
    ら、閑散とした住宅街の通りをトボトボとバス停に向かって歩き出した。





    テーマ : せつない。さびしい。恋しくて。 - ジャンル : 恋愛

     | HOME | NEXT»»