純情少女とエロ女 第四章C後 続編

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SNOW CLYSTAL

Author:SNOW CLYSTAL
著者:スノー クリスタル

ずっと書きたいと思っていた
テーマに取り組んでみました。
男って… 女って…
やっぱ、奥が深くて解明でき
ないなぁ…

特に主人公が16〜20才まで
という設定なので、
大人の男女の愛まで掘り下
げるところまでは行かなかっ
たかもしれないけどね、
そんでも体当たりしてみたゾ。

まわりに振り回されながら
変化していく少女の心と体に
ピッタリ寄り添って、読み進
んでね。

ついでにいっしょに恋をしな
がら…。
   


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    第三章C後続編:15話  読むのにかかる時間: 30分くらい


    それから数日後。
    あやめがこの町から消えてしまった。

    ”私は旅に出るけど、心配しないで。探さないで。”

    と家の机の上にメモを残して。
    なぜか持ち物が、どこを開けてもきちんと整理されていた。

    3日経っても行き先に何の手がかりもなかったため、
    家出の可能性もあるとして警察に捜索願いが出され、
    わかる範囲の友人、知人にも家族から連絡が行った。

    その連絡が巡りめぐって銀平に。
    だから、テイクファイブにその知らせを届けたのは銀平だった。

    マスターはあやめの言葉を思い出して蒼白になる。


    祐と夜菜子も別々のルートで連絡を受け、店に集合した。
    さすがに、親戚でもないのにあやめの家に押しかけて待機するのは
    大げさな気がしたからだ。


    マスターは祐と夜菜子が一緒に現れたことで、事情を悟る。
    そして、あやめが無事に戻った時のために機転を利かせ、

    「そう言えばあやめちゃん最近来て、何かの本を読んで、その舞台に
    なった場所にどうしても行ってみたくなったようなこと、話してたな。」

    とだけ言った。


    「なあんだ。どこよ、それ。人騒がせだよね。

    あやめは純情なのはいいけど、その分影響されやすくて、
    いいと思うとそのことだけで頭がいっぱいになるタイプだから。」

    わかったようなことを言い、夜菜子はこんな場でも祐といちゃつく。


    マスターは、こんな奴らのせいで命を捨てようとまで思い詰めたあや
    めが不憫だった。

    −あやめちゃんの前でもこの調子だったのかよ…


    「いいんじゃないか、君たちはもう帰っても。
    関係ないんだろ、もうあやめちゃんとは。」

    「マスター、その場所、思い出したら家族に教えてあげてね。」

    夜菜子は祐の腕にぶら下がり、2人はお互いにまとわりつきながら
    店を出て行った。


    「マスター、それどこ? 教えて!」

    銀平が真剣な眼差しで聞く。

    「教えたってしょうがないだろう。
    俺、警察へ知らせに行ったその足で、自分で探しに行くよ。」

    「店、閉めてか? 俺も行く。」

    「だめだ。足手まといだ。 俺、バイクで行くからさ。」

    「俺もバイクだヨ! 場所だけ教えろ!」

    銀平が涙声でマスターの袖を掴み、詰め寄る。

    マスターは、銀平のあやめに対する気持ちは知っていた。
    そしてとうとうそのひたむきさに負け、地名を教える。

    それは、祐が最近訪ねたという千葉の岬。

    銀平は、はやてのように飛び出して行った。





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    あやめは電車を乗り継ぎ、銚子の海辺に着いた。

    ひとりで旅をしたことがなかったあやめにとっては大変な距離だった
    ので、一度途中下車して駅近くのてビジネスホテに1泊し、
    自分がいなくなってから届くであろう家族宛ての手紙を書き終えてい
    た。

    ”迷惑をかけてしまうのは心苦しいが、急に海が見たくなって出かけ
    た先で足を滑らせて亡くなったことにしてほしい。

    十代のうちに、大人になる前に、この世とお別れしたい私の気持ちを
    理解して、悲しまずに送り出して。
    私のことは、人生で一番みずみずしくて輝いている時に死ぬので、幸
    せ者だったと思って下さい。

    今まで育ててくれてありがとう。

    私の貯金は弟と妹に”

    そんな内容。


    さて、目的地に着いたのはいいが、あまり人目に付く表舞台の灯台
    のあたりはまずい。

    あやめには、身を投げるのにピッタリの絶壁の下見が必要だった。
    中途半端に敢行して失敗に終われば、あとがややこしいことになる。

    それで、灯台から離れた場所で崖や岩場を探しながら、海岸沿いの
    道路を歩いていると、
    ヤーサンのらしいボロ車がチンピラ風の男の子たちを乗せてまとわり
    ついて来た。

    「おねえさ〜ん、ひとりで何してるの?
    いっしょに遊びに行かない?」

    −また同じセリフだ…

    あやめはこの世のこういう繰り返しにウンザリしていた。
    だが、日が暮れかけている。
    どちらにしろ今日はどこかに泊まらなければならない。


    「すみません。 このへんに旅館か民宿ありますか?」

    「何言ってるのお姉さん、女ひとりで泊めてくれるとこなんてないよー、
    まだこの辺は古いから。
    自殺した人もいるからねー。

    だめだよ、だめ。

    何なら俺たちのアパートにおいで。
    だいじょぶ。変なことしないから。」

    あやめは彼らを振り切り、土産物店が並ぶ方方向へ歩いて行った。


    それから数十分後、何かいいことがないかと再びそのあたりを車で
    巡回していた同じ男たちがあやめを、急な斜面が屏風のように左右
    に広がる、風光明な海辺で見つける。

    男たちは顔を見合わせた。

    「ひょっとして、本当に飛び込むつもりかも…!」

    「お譲ちゃ〜ん、わかった。わかったから。
    ほんとに俺たちんちにおいで。
    身分証明書でも戸籍謄本でも何でも見せるから!」

    「何も悪いことしないって、一筆も書く。ちゃんと実印押して。
    だから、今日は俺たちんちに来て!」

    あやめは吹き出してしまった。
    見れば、ガラは悪いが、まだ若い兄ちゃんたちだ。

    「ほんとにいいんですか? 悪いことしない?」

    「しない、しない。インディアン、ウソツカナイ。」

    男たちは、手に手に免許証と身分証明書のようなものを差し出した。
    そのうちのひとつに、ナントカのナントカ支部のナントカ組と書いてある。

    −ホントにヤクザかその卵さんたちなんだ…


    あやめはこの男たちが信じられるような気がして来た。

    −いいよ、もう裏切られても。
      どうせこの世とはお別れなんだから、最後にこの人たちを信じる賭
      けをしてみてもいいかもね。

      それに、今さら何をされてどうなっても、どうせこの世の私はもう、
      ボロボロに汚れた傷物なんだから。


    彼らのアパートというところに着いてみると、それはそれはむさ苦しい
    ところだった。

    流しには、カビの生えたような洗い物、調理台の上や脇はカップラー
    メンの空容器の山。

    部屋には万年床らしい布団が所狭しとびっしり敷かれ、
    何日も洗濯していないようなシーツとカバーに、
    何年も洗濯していないようなカーテン。

    食べ物と汗が混じったような異臭がする。

    男たちはあやめにラーメンをふるまってくれたが。
    そこに入れるネギを、彼らはよくある市販のカミソリで切っていた。


    「お譲ちゃん、もし自殺しに来たんなら、思い留まって。
    俺たちもみんなハンパもんだけど、世の中、死のうと思えば何でもでき
    るよ。

    な。俺たち、今日会った娘が明日どざえもんで見つかったんじゃ、
    この先、気色悪くて眠れねえからよ。」


    あやめがラーメンを食べ終わると、男の一人があやめの手を引き、
    2階の部屋へ導いた。

    何とそこには、小さなろうそくが数え切れないほど灯され、隙間風に、
    はかなげにゆらゆらと揺れていた。

    客用に用意してあったのか、1階のとは違う、きれい目の布団が敷か
    れていて、まるで何かのパーティーのキャンドルサービスのように美し
    いシーンになっていた。

    「あのな、この間、離れ離れで暮らしてる俺の妹が遊びに来たんよ。
    そん時、その妹を喜ばせようと思って、俺が考え付いたことなんだ。

    きれいだろ。
    コースターに銀紙くっつけてクギ通しただけのキャンドル台で、ろうそく
    も一袋何百円てしろもんだけどよ。
    あー、もう一回使えて良かったなー!」


    あやめはその美しさに見入ってしまった。
    空気の流れにより、炎が微妙に揺れる。

    心に響く無言の音楽が流れているようだった。


    「こんな思い出だけど、これここにも灯してよぉ、」

    と、男は自分の胸を拳で叩き、

    「お家へ帰んなよ。あんたよりもっともっと辛い目に合ってる人、いっぱ
    いいるぞ。」

    あやめはあまりの意外さに、胸がつかえてしまった。
    手を引いて行かれた時は、本当にもうダメかと覚悟したのだった。

    『やっぱりこの人数に輪姦されるのだ…』 と。


    あやめはその夜、そのろうそくの灯に包まれて寝た。
    最後の夜に、この世とのお別れの儀式をしてもらったような気がした。


    だがあやめは、そこでの滞在をもう少し延ばすことになる。
    この世を去ろうという気持ちに変わりはなかったが、彼らに何かお礼
    をしなければ気が済まなかったのだ。

    アパートの掃除をし、地元の店に行って買出しをして、食卓に思い切
    り“おふくろの味” を並べた。

    男たちの感激したこと。
    『みんな事情がある人たちなんだな』 と、あやめは思った。

    本当に人は見かけによらないということがつくづくと、しみじみとわか
    ったのだ。
    あやめの周りにはいない人たちだった。

    ”男は誰でも…” そう、ひとくくりにするのは間違いかもしれない。

    最後にそんな気持ちをあやめに持たせてくれたのは、世間からは
    ワルだと思われ、疎まれてさえいる彼らだったのだ。






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    ヤクザの卵さんたちに ”必ず家に帰る” と約束をさせられたあやめが
    雨の中、電車の駅の軒下で雨宿りしていると、
    ナナハン(大型バイク)に乗った男が道路に水しぶきをあげ、半円を描
    いて急停車した。

    何事かと見ていると、バイクから降りた男がヘルメットを取る。
    それがテイクファイブのマスター広瀬 陵(りょう)とわかった時には、
    あやめはCGの合成画面か何かを見ているのかと思った。

    「あやめちゃん!良かった、無事で。
    ここへ向かう間、生きた心地がしなかったよ!」

    「マスター?!」

    あやめがそう言い終わらないうちに、陵はあやめをきつく抱きしめて
    いた。

    雨の中の抱擁。

    相手が30を超えた髭男だったため、わけありの恋人同士に見えない
    こともない。

    そこでなぜか、まわりの茂みから 「ヒュー ヒューッ 」 という口笛や
    冷やかしの声や、拍手が起こった。

    そう、ヤクザの下っ端さんたち、いや、ヤクザの卵さんたちが、あやめ
    が無事に電車に乗るかどうかを蔭から見守っていたのだ。

    「なんじゃい、あいつら…?
    とにかく乗って。 はい、ヘルメット。それに防寒服。」

    陵があやめに服の入った袋を手渡して言った。


    あやめは何が起こっているのか深く考える暇もなく、駅の待合室で今
    着ている服の上にその防寒服を重ね着し、陵のバイクの後ろにまた
    がった。

    「しっかりつかまってろよ!」

    大きなバイクのエンジンの響きは、あやめの体に直接伝わって来て、
    そのマシン自体が生き物のようだ。
    あやめはしっかりと陵の背中にしがみついていた。

    −私、あの現実に引き戻されちゃうの?

      それにどうしてマスターは、私がいなくなったって知ってるの?
      うちの家族とはつながっていないのに?

      マスターまで私がいなくなったことを知っているってことは、相当い
      ろんな人にまで問い合わせが行っちゃったってことなのかな…

    それにしても、それならば、本人が来なくったって、警察に言えばそこ
    から連絡を受けた地元のお巡りさんが捜索の手を回すだろう。

    陵が現れたことが、あやめには不可解だったが、
    本当を言うとここ1〜2日、全く見知らぬ土地で見知らぬ人たちの中を
    さまよっていたため、あやめはちょっとホッとしてしまった。

      (何だい、死のうという人が…)


    陵があやめを連れて行ったのは海の近くにある彼の実家で、ところど
    ころに改修の手が加えられた古い民家。
    潮の匂いに包まれていた。

    陵は両親に、大切な知人の娘さん として、あやめを紹介した。

    漁師だという陵の父親の釣りたての魚料理をたくさんごちそうになり、
    母親の焚いてくれた薪のお風呂に入り、夜になると、
    襖で仕切られた部屋に2人の床が敷かれた。
    陵の部屋は別にあったが、夜中にあやめが家を抜け出すとか自分を
    傷つけるようなことがあってはいけない、と心配してのことだ。

    陵があやめの床のある方の部屋に来て、がっしりとした木のテーブル
    に肘を付いて話し始める。


    「君の居所が思い当たった時、何で警察に言いに行かなかったかっ
    て?
    それはね、もし警察に保護されて君が戻れば、噂にもなるだろうし晒
    し者になる。 
    それが可哀そうだったからだよ。
    小さな町のことだからね。

    俺は賭けたんだ。
    絶対に君をこの手で探し出してみせるって。
    俺の地元だしな。

    旅館組合にも頼んだ。漁師組合にも頼んだ。
    『こんな子を見かけたらすぐに引き留めて、俺に知らせてくれ』 って。

    それで間に合わなかったら、俺の負けだ。
    君は望み通り、きれいなままで死んで行く。
    それはそれで、本人が望んだことなんだから仕方なかったこととする。

    でも、死なせたくなかった。
    俺の手で探し出して、俺の命をかけても救い上げたかった。
    冬の海にでも飛び込むつもりでいたよ。」

    「…恋人でもないのに? 何でそこまで…?」

    「… もちろん、俺が 『今死ぬのもいい』 なんて軽はずみなことを言っ
    てしまったという事に対する責任はある。
    だけど…。 何よりも、君に惚れてるからだよ。」

    「えーっ、冗談はやめて下さい。大人の男のマスターが、こんな小娘
    を?」

    あやめは、にわかには信じられない。

    『まさか!
    男は女を抱きたいために、こんな場面でさえも口から出まかせを言う
    のか?』

    あやめの脳裏をそんな疑問が過ぎる。


    それから陵は、しばらくの沈黙のあと、決心したように話し始めのだ。

    「あやめちゃん、俺は君より年が20才近く上だ。
    そして、ある事情があって独り身でいる。

    俺はあやめちゃんが祐に連れられて初めて店に来た時、金槌かなん
    かで頭をぶち割られたようなショックを受けた。

    この世にまだこんな純情な娘がいたのかって驚きもあったけど、
    その女神のような娘が、手の速さでは右に出るものはないと言われ
    ていた祐と一緒だったから。(笑い)

    それから店に来る君を見たり、君と話をしたりしているうちに、年甲斐
    もなく本当に君に惹かれてしまったんだ。

    だが君は祐に夢中だった。

    俺は、自分の気持ちを押し込めたよ。
    そして君を見守ることにした。

    君を手に入れることが俺の目的じゃなかった。
    君が幸せになってくれることが、俺の一番の望みだった。

    だから一生、その気持ちは心の奥にしまっておくつもりでいたよ。

    だけどね、君が祐の餌食になりそうな時、俺は何もできなかった。
    そうなることは最初からわかっていたのに…。
    それが最大の後悔さ。

    恋路ってのは、他人が何を言ってもどうにもならないものだろう?
    俺だってそうだった。
    本人が気付くまで放っておくしかないだろう。
    その真っ只中にいる時はさ。

    だから、君が他の女の子たちのように、祐とのつき合いは一時的な
    ものだと気付いて、乗り越えて、笑ってまた店に戻って来てくれるの
    を待つことにしたんだ。
    祐が本気になるという可能性も否定はできなかったし。

    だから不幸にもその時が来てしまったら、俺はあやめちゃんに羽を休
    めてもらう居場所になろうと思った。

    もちろん、俺以外の男との新しい恋のために羽ばたくためにさ。

    この間来てくれた時、君があんまり生き生きしてたから、その時が来
    てたってことに気がつかなかったんだよ、俺は。
    とんでもない馬鹿野郎だ…。」

    「マスター…」

    あやめの目がうるうる。

    「ひょっとして、私にそのような手紙をくれたことある?」

    「俺が? いいや。
    俺、あやめちゃんがどこに住んでいるかも知らないもの。」


    陵とあやめが暖かい部屋でいい雰囲気になっているその頃、
    銀平は雨の中を猛スピードで、千葉の岬を目指していた。

    バイク用の眼鏡が雨風に打たれて外れ、コンタクトが外れ、最悪の
    視界条件の中、まっしぐらに。







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