純情少女とエロ女 第四章C後 後編

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SNOW CLYSTAL

Author:SNOW CLYSTAL
著者:スノー クリスタル

ずっと書きたいと思っていた
テーマに取り組んでみました。
男って… 女って…
やっぱ、奥が深くて解明でき
ないなぁ…

特に主人公が16〜20才まで
という設定なので、
大人の男女の愛まで掘り下
げるところまでは行かなかっ
たかもしれないけどね、
そんでも体当たりしてみたゾ。

まわりに振り回されながら
変化していく少女の心と体に
ピッタリ寄り添って、読み進
んでね。

ついでにいっしょに恋をしな
がら…。
   


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    第三章C後 後編:13話  読むのにかかる時間: 30分くらい


    あやめが放心状態で女の痛みと心の痛みをかばうようにして部屋の
    隅に座り込んでいると、真のケータイが鳴った。

    「はい…」

    真の彼女からだ。
    真は何事もなかったようにていねいな言葉使いで、まるでうぶな少年
    のようにその人と会話を交わしている。

    あやめの中に、自分の存在の無価値さ、使い捨てのように扱われた
    ことに対する怒りのようなものが込み上げてくる。

    −一度セックスをやったということで、祐さんとやったということで、
      これほど私は軽い子に見なされちゃうの? …

    そこであやめが取った行動は…


    後ろ姿の真に近づいて、甘えるように大きな声をかけたのだ。

    「真さぁ〜ん! 何してるのぉ、早く来てぇ!」

    「あっ、何すんだよ!」

    焦りまくる真。
    あやめはその真からケータイを奪い、

    「だあれ、これ? いやーん、まこっちゃんたら、ずるいーぃ!
    私ってもんがいるのにーぃ。
    両股かけてるのぉ〜?!」

    …そこで通話は途切れる。

    あやめも強くなったものだ。
    もう受身でやられるだけの女の子ではない。

    −バージンの頃はあんなに優しくしてくれたのに…。
      そうでなくなったとたん、こんなに違ってしまうなんて…。


    真は頭を抱え込み、部屋の真ん中で固まってしまった。


    あやめは優しい子で、今まで人を傷つけようと思ったことはない。
    だが、今日という日は、真の彼女のためにも、こんな男はやっつけて
    やらねば気が済まなかった。


    「このヤロー、何てことするんだ!」

    真が正気に返ったように起き上がると、拳を上げてあやめに迫って
    来た。
    あやめは大きく目を見開いて真を睨み返す。

    その目に涙がいっぱい溜まり今にも溢れそうだったため、さすがに
    真も振り上げた拳を下ろすことができなかった。


    ふたりが部屋の隅と隅でしばらく沈黙したままでいると、祐が帰って
    来た。
    あやめの来訪に驚いたようだが、嬉しそうでもある。

    「よく来たね」 と言ってあやめの腰に腕を回すと体を密着させて、真
    がいるのにもかかわらずディープキスを始めた。

    あやめは、幸せなのかわからない。

    真がいなければ、真とのことがなければ、このキスでもっと感じる女に
    なっていたかもしれなかった。
    長い間会いたくても会えなかった王子様に、やっと会えてするキスだ。

    −熱い抱擁でもディープキスでも、うっとり受け入れるつもりだったの
      に!


    あやめは日帰りのつもりで来たことを告げると、何事もなかったように
    料理を温めた。

    「何だよ、せっかく来たんだから、泊まって行けばいいじゃん。
    おっ、嬉しいなぁ。 あやめの手料理かぁ。
    真はもう、もらったの?」

    あやめは祐のそんな、滑らかに転がるような甘い声が近くで聞けるこ
    とが嬉しくてたまらない。
    最初に会った王子様のままだ。

    あやめの心が出会った当初に還り、あの頃と同じように祐に魅了され、
    ドキドキして、上がって、次に何を言っていいのかわからなくなる。

       真には、あーんなことが言えたのに…


    真はというと、

    後姿で何か捜し物をしている様子だったが、

    「俺はいいわ。出かけるから。」

    と言い、バックパックを掴んで外に出て行ってしまった。


    「あいつ、気利かせたつもりだな。
    だけど他に泊まるとこないから、すぐ帰って来るよ。
    彼女いるけど純情恋愛で、まだそういう関係じゃないし。」

    祐が、可笑しそうに笑いながら言った。





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    「うまい、うまい、」 と祐があやめの手料理に舌鼓を打つ。
    夕飯を食べた後、ふたりは銭湯に行くことにした。

       あれ、いつの間にかやっぱ泊まることに
       なっちゃったんだ?

    祐の家も真の家も裕福ではあったが、そこは甘やかさず、息子たちを
    高級マンションに住まわせることはせずに下町の学生アパートをあて
    がった。
    まあ、他の予備校生たちと同じような環境に置くことで、受験生である
    という自覚をより強く持たせるという考えもあってのことだろう。

    予備校にやるのもアパートを借りるのも、はたまた晴れてどこそこかの
    大学に合格しても、莫大な出費が伴う。
    ここは息子たちに本腰を入れて勉強に取組んでもらわなければ困る。

    祐と真を同じアパートに住まわせたというのも、双方の両親の思惑か
    らだ。
    知った者同士、同じ目標を持つ者同士でアパートをシェアさせれば、
    お互いの息子たちをある程度監視することができる。
    大きくハメをはずすこともないだろう、という算段だ。
    女を連れ込むことはできないだろうし、病気をすれば助け合うこともで
    きるだろう。

    そのアパートの間取りは2DKだったが、部屋のしきりは取り外されて
    いた。
    また、住人用に共同の浴室はあるが味気ないので、祐は銭湯通いを
    ひとつの楽しみとして日課のようにしているのだという。


    祐と寄り添って銭湯へ行ったことは、あやめにとってもうひとつ、心く
    すぐられる思い出となった。
    母が持っていたナツメロフォークCDコレクションにある “神田川” の
    歌そのものだったのだ。

    銭湯から帰り、いっしょにテレビを見ながら、
    うつむいたまま一点を見つめていたあやめの目から、涙がポロポロ
    零れ落ちた。

    祐は、”永遠に君を愛す” とか、”好きなのは君だけだ” とかは絶対
    に言ってくれない。
    だから、
    ”今この瞬間の幸せが、いつまで続くんだろう…” という儚さに。

    「何? どうしたの? 何かあったの?」


    何かあったのかと聞かれたら、そりゃ、いっぱいあった。

    祐とつき合っていたことが原因で家を追い出されることにまでなり、今
    は下宿していること。
    銀平と真にされたこと…。

    だがあやめは、マイナスなことは言わなかった。
    今この瞬間のあやめの人生の輝きを、そのままにしておきたかった
    から。


    「うん。 今があんまり幸せで…。」

    それだけ言った。

    祐が愛しそうに、あやめの体を抱き寄せる。


    「せっかく真が気を利かせてくれたんだから。」

    電気が消され、あやめはベッドへ導かれる。


    「祐さん、お願い。今日はいっしょに眠るだけにして。」

    「え? 何だよ、それ。
    まだそんないい子ちゃんみたいなこと言ってるの?」

    「…だって… 妹なんでしょ? 私…」

    兄と妹のような感覚でつき合おうと言われたことに、あやめはどこか
    でこだわっていた。

    −妹なんて言うんだったら、なぜセックスしたの?
      私、そのために家を追い出されるほど叱られて、祐さんのお母さん
      にあんなことまで言われたんだよ…
      私の方は、痛いだけで何のいいこともなかったのに…

    セックスなんて、恥ずかしくて痛いだけで、まわりの人にいろんなこと
    言われて…されて… 何のいいこともない。


    「”妹みたいだ” ってだけだよ。
    あやめとはセックスしても、全然いやらしくないんだもの。
    (セックスは、いやらしいから面白いんじゃないか! ←本心)

    だけど、妹じゃないだろ。
    あやめは色気はまだないけど、女は女さ。
    色気もそのうち自然に出てくるよ。」

    −まるで、まだ色気がないことが欠陥みたいに思えてくる…


    「でも…
    ”妹のようにつき合おう” とか、”他にもっといい奴見つけた方がいい”
    とか…」

    「ああ、あの手紙かぁ。
    俺は、今はあやめとつき合ってるけど、俺よりもっといい奴が出て来
    たら、俺はあやめのためにいつでも身を引くってことさ。

    あやめ、まだ17だろ?
    初めての男としかつき合わない人生なんて、面白くも何ともないだろ
    が?」 
    (処女をもらったからって、
    そのために縛られるんじゃ、たまんねーよ! ←本心)


    「でも、もっといい人が出て来るまでは、彼女のままでいいの?」

    「いいさ。 でも俺も同じように、あやめには縛られないよ。
    それでもいい?」


    あやめには、祐の言っていることがイマイチよくわからない。

    −ふつう、“つき合う” ってことは、
      ”相手を独占するかわりに自分も他の人には目を向けない”
      って約束することじゃないの? …


    さて、同じベッドに寝て、祐があやめに手を出さずにいられるのか…。




    こんな私だったらいいわけ?



    ショートヘア




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    ふたりはベッドの中。

    せっかく愛する人の腕の中に戻れたというのに、抵抗感を乗り越えら
    れないでいるあやめ。

    「なあんだ、妹みたいって言われたことにスネてるんか…。

    悪かった。色気がないなんて言って。
    あやめは純情そうなところがいいんだからさ、いいじゃないかいつま
    でも少女のようでいれば…。」

    そう言いながら祐はあやめの耳の後ろへ、首の後ろへと手を回し、
    髪に手櫛を入れるようなしぐさをしながら、

    「でもさあ、初めてん時うまくいかなかったから、今度会った時はもう
    ちょっとマシに愛してあげようと思ってたんだけどなあ。」

    そう言うと手のひらをあやめの頬に移動させ、両手ですっぽり包んで
    引き寄せると、おでこにキスをした。
    軽くエアコンを利かせた部屋で、薄い掛け布団の中の祐の体が暖か
    い。
    お風呂上りのいい匂いもプーンとしてくる。

    あやめの気持ちが揺らぐ。
    だが、また自分の心も体も、かたくななほどきつく閉じるのを感じた。

    あやめには、精神面の不安定がそのまま肉体面に大きく影響してし
    まう。
    信じよう、力を抜こうと意識すると、体の方はそれに反比例するように、
    よけい固くなってしまうのだ。

    あやめは、祐の腕枕だけで十分幸せだった。
    それで、眠ったふりをすることに。

    とはいうものの、”祐の彼女でいるためには、早くセックスじょうずにな
    らなければ” という焦りのような気持ちも湧いてくる。

    −“もうどうでもいい”って諦めて、無表情、無感覚になれば、体は力
      が抜けて柔軟になるのに。
      そうすればきっと祐さんも、もっと楽に入って来れるんだよね…

      入れる 入る 開く 挿入する 差し込む …

    あやめは眠ったふりをしながら一生懸命自分自身に暗示をかけた。

    そして…

    何かが起こりそうになっていたその時、真が帰って来たのだった。


    「悪いな。俺、どっか行こうかも思ったけど、泊まるとこないし。」

    「いいさあ。俺たちもラブホとか行く金ないし、どっちにしろあやめ姫様
    が、『そういうヤラシイことするのは嫌!』 だってさ。」

    祐のその言い方が投げやりだったので、あやめはてこずらせたことを
    後悔する。
    祐との距離を縮めるチャンスを、自分で壊してしまったのか。


    部屋が明るくなってしばらくすると、誰かがドアをノックする。
    真が開けると、そこには女の人が立っていた。


    「今、音が聞こえたから。祐さん、いる? この間はどうも。」

    弾んだ声でそう言って部屋の中を覗き込んだ彼女は、祐のベッドに祐
    といっしょにあやめがいるのを見て、隠しようがないほど狼狽した。

    「あ、これ、夕飯に作り過ぎちゃって…。
    おすそ分けにどうかなーって…。持って来たの…。
    …どうぞどうぞ。」

    「あ、ごっちゃんです。」

    さらりと、祐。

    その人は何も言わずに気もそぞろという感じでドアを閉め、立ち去って
    しまった。

    悪い予感がして、「誰?」 とあやめ。

    「上の階に住んでる人だよ。」

    「ふうん…。」

    「何でもないよ。彼女には本命の彼氏がいるんだから。
    なかなか思いが通じないってこの間、泣いてたから、ちょっと慰めてや
    ったんさ。」

    「…。」

    「大丈夫だよ。俺のことなんか眼中にないからさあ。
    彼氏とヨリが戻れば、もう俺んとこ来ることもないだろ。」

    −え? ということは、抱いてあげたってこと?!?

    何か言おうとしたがうまく言えない自分をもどかしく思いながら見ると、
    祐の顔に翳りが…。
    何だか誰も踏み込んで行けないような、寂しそうな横顔だった。

    それであやめは、何かひとこと言いたかった気持ちを胸の奥に押し込
    んでしまったのだった。


       そんな時はね、騒げばいいんだよ、あやめちゃん!
       そういう子の方がかわいいんだよ、男は。 違う?
      




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